2022/04/01 10:24
子どもの頃から、我が家には織機がありました。
「スローフードは、おいしく健康的で(GOOD)、環境に負荷を与えず(CLEAN)、生産者が正当に評価される(FAIR)食文化を目指す社会運動です。 “食べる”ことは私たちの生命に直接関わり、人間の歴史を築いてきました。そこには、あらゆる地域の伝統・叡智・喜びなどが込められています。料理を味わって楽しみつつ、料理の皿の外にあるその見えない味付けを考えるのが、私たちスローフードの運動です。 地球や社会の環境が大きく変わろうとしている今、様々な分野や世代を越えて多様性に満ちた持続可能な暮らしを考えていかなければなりません。」(日本スローフード協会のHPより)
単にゆったりとした食事の時間を大切にしようということではなく、健康や、文化や、地球の環境やいろいろなことを大切にしながら食について考えて実践していこうというムーブメントです。「スロークロス」という言葉が生まれたということは、「食」と同じように、「衣」についても大量に生産し大量に消費することへの反省を込めて、同じような価値観を大切に考える人が少しずつ増えているのではないでしょうか。
食に比べると、衣を原料や環境から考えるということは、日常の生活から距離があります。それこそすべて取り入れるのは難しい。家で料理をすることは今でもほとんどの家庭で日常の風景ですが、家で布を織る風景はほとんどの家庭が手放してきました。家事の一環だとしたら、とんでもなく大変な作業で、主婦としてはできたらやりたくない作業だったはずです。なんといっても、素敵なものが手軽に買えるようになったのですから。
うちでも、繊維製品の大部分は購入しています。織って作る布のものはプラスα的な存在です。昔のように必要に迫られて作るわけではないから、ある意味気楽に、楽しみとして続けていられるということはあると思います。
作る過程を知っているから、家で作ったものはもちろん、買ったものであっても大切に使おうという気持ちになります。ものが豊かにあって手軽に手に入る時代であっても、時々、綿は植物だということや、作る過程を考えたらぼろ布でも貴重で捨てられないという気持ちを思い出すのは良いことだと思います。そして、うちで作っているものや糸紡ぎなどの綿仕事を見てもらうことは、世の中から薄れているそういう感覚を思い出してもらったり、知ってもらう一つの機会になるかもしれないと思います。
家で使う布のものを自分で作る。糸から織る。時には種を蒔いて収穫した綿から糸を紡いで織る。大量生産できないもの、貴重な材料を使って作る。失敗したものもアートっぽくて面白い。
あまりストイックではなく緩やかな布生活です。楽しんでいただけたら幸いです。