2021/10/16 10:35

ハンサムなマフラーの店には、同じような名前や説明がついているのに、色が違うマフラーがあります。
例えば「桜の色」。一方はピンクがかったベージュ系の色、一方は黄色とグレー。

見た目の色で説明するのが分かりやすいとは思うのですが、作り手としてそのマフラーの魅力を伝えたいと思うとどうしても「桜の色」と言いたくなてしまうのです。そんな、商品説明に書ききれない色の秘密を少しだけお話ししたいと思います。



ハンサムなマフラーの店では、主に植物で染めた糸で手織したマフラーを製作販売しています。

なので、それぞれのマフラーの色を、くるみ色、桜色、など染めるために使った材料の名前で呼んでいます。

自分たちにとっては、ブラウンとかベージュ、黄色、赤、というよりも植物の名前の方が色合いがピンとくるのです。

ブラウンといっても、くるみの色とアカメガシワの色は違いますし、ベージュでも、梅と桜の色は違います。そして、同じ植物でも季節によって、また生えていた場所によって違う色が出たりするのです。色との出会いは一期一会。あの色が欲しいんだけどなあ、という色もいくつかあります。というのも、たまたまご縁があっていただいたというものも多いから。


今年の春もそんなで会いに恵まれました。春先に、開花の時期を前にして切られることになった桜の枝をいただくことができたのです。


枝は細かくチップ状にしていきます。手作業なので結構大変です。



チップ状にした枝や幹を大きな鍋に入れて、水を加え、煮ます。上の写真は樹皮の部分だけ。使う部分によっても色が違ったりするので、材料に余裕があるときには、部位ごとのものも試してみます。


煮出した液に、今度は糸を付けて煮ていきます。

その後、色を定着させたり発色させたりする媒染という作業をすると、化学変化によって色が変わったり、色が落ちにくくなります。
化学変化といっても、ミョウバンや鉄など、台所で使っても安全な媒染剤を使うようにしています。使う人も作る人も安心安全が一番です。

 
今回は、桜からこんな色の糸ができました。木綿なので、ウールやシルクに比べて、あまり濃い色には染まりません。

同じ植物を使って染めてもも、意図的に違う色に違う色にすることもできますし、意図せずに違う色になることも。
どちらにしても、その時に、その植物からいただいた色を生かしてデザインを決めていきます。

計画しても、思ったような色にならないこともある草木染め。思った色にならなくても、それはそれで美しい色なので、偶然を楽しみ、植物の不思議さや、先人の知恵を楽しみます。

だいたいの狙いはあるものの、最終的にはできた色を見て、さらには織りながらデザインが決まっていくのです。ライブ感を大切にしているというか、おおらかに気持ちのままに織りあげていく感じです。

なので、同じデザインで何本も作るよりは、一番いいと思う色の組み合わせで一本だけ作る、という感じの作り方です。

それが、同じ桜で染めた糸だけれども、ピンクがかったベージュ系のものと、グレーとイエロー系のものができる理由です。


同じものを沢山作ることはできません。
ある意味、究極に風流で、そういう感覚が究極にハンサムなスタイルのマフラーではないかと思っています。