2021/02/18 09:47

「裂き織り」をご存じですか?
 
 裂き織りというのは、布を細い紐状に切って(または裂いて)緯糸(よこいと)として織った厚みのあるしっかりとした織物です。昔は布が貴重だったので、擦り切れたり傷んだりして弱くなった布を再利用するための知恵でした。裂き織り布自体が丈夫で長持ちするものなのですが、裂き織り布になる前も違う用途で使われていた布たちだったことを考えると、すごい長寿命の、まさにロングライフということになります。

 木綿が日本で広く使われるようになったのは江戸時代だといわれています。それ以前は麻など保温性のあまりない繊維が庶民にとっては一般的で、しかも棉(わた。まだ生えている、植物の状態の「わた」は木偏で棉と書くそうです。)は温暖な気候で育つ植物だったため、棉の育たない寒い地方ではやはり貴重なものでした。そのために、着物はつくろいながら大切に着て、それでも古くなったら綿入れや布団に作り替えて、さらに布が擦り切れたら、それを裂いて糸のように使い新たに布を生み出していたのです。厚みがあって丈夫で暖かな裂き織りの布は、作業着や防寒着、家の中ではこたつ掛けなどとして使われました。

 昔の人の知恵ですが、素材を大切にし、必要なものを作り出していくというのは今の時代にも必要なことだと感じます。

 我が家では、母の織った裂き織り布のものたちが活躍しています。上の写真のマットは浴衣地を裂き織りにしたもので、玄関を上がってすぐのところに敷いてあります。大きいけれど、洗濯機でも洗えるし、もう20年くらい使っていると思うのですが、重宝しています。

 小さいものではコースター。これは作品展やイベントをするときの一番人気の商品です。自分の家でもずっと使っているので、使いやすいことと丈夫なことでは自信をもってお勧めすることができます。その時々で少し大きいものを作ったり、小さいものをと求められればそれに応じて小さいものも作ったりと、柄も楽しみながら作るので、今までずいぶんたくさん作ってきました。

 商品の説明にも書いていますが、こちらでは、主に端切れであったり、デットストックになっていた布を利用しています。また、衣類や浴衣などのUsed品も素材として使用している場合があります。

 浴衣などは、今は集めるのが大変になりました。それでも、裂き織りをしているというと、不要になった生地や着物を譲ってくださる方もいらっしゃって、使わなかったものが使えるものに生まれ変わるのでとても喜んでくださいます。


 上の写真のバッグは、もともとは着物の生地でした。ご近所の方にいただいた着物を、裂き織りにしてバッグを作り、一つプレゼントした時のものです。絹ですが、結構丈夫で、自分も同じデザインのバッグを使っていたのですが、見た目の面白さだけでなく使いやすかったので、かなりの頻度で持ち歩いていました。

 コースターやマット類は木綿のものが向いているかなと思います。着物などの絹のものはバッグや服にしても素敵です。

 残り布や古い布を使っていますので、その時々違う柄になります。同じように作っても、全く同じに柄にはならない面白さがあります。  布の命を全うするというのも裂き織りの魅力だと思うので、時には買い足すこともあるのですが、うちでは基本残り布や古い布を使います。商品であるとはいえ、新しいものを裂き織り用に切るのは気が引けるので。古着など古いものは使う前に洗濯などして清潔感には気を付けていますが、それでも古いものは好まれない方にはお勧めできないのですが・・・。逆に、布の命を使い切るという裂き織りの精神みたいなものに共感していただくことも多いので、そのような方にお届けできるように発信していきたいです。

 本当は手に取って選んでいただけたらよいのですが、ネットショップで販売するときには、一つ一つの柄は違っても縦糸が一緒のものは同じシリーズとして出品しています。写真でできるだけイメージをお伝えできるようにしていきたいと思っていますが、一枚ずつ写真に撮っているとなかなか作業が追い付かなくなってしまうのが悩みです。。

 商品の説明ページで書き切れないことを、こちらのブログで書いていきたいです。商品として販売はしていないけれども、家で使っているものの実例紹介とか、制作の過程の話とか、家の織物の楽しみを少しでもお伝えできたらいいなと思っています。

 長くなってきたので、今回はプロローグ的なことしか書けませんでしたが、追々いろいろ紹介していきますね。一緒に織物を楽しんでいただけたら嬉しいです。